A4_相続税・贈与税

111歳事件と相続申告

2010年8月19日 05:00

即身成仏と即身仏

 

30数年前、「即身成仏する」と自室に閉じこもり、水や食事を絶って、そのままミイラになった、というニュースは衝撃をもって配信されました。現代社会の家族関係を表象するような社会病理現象と受け止められたからだと思います。

正確には、「即身成仏」とは、仏教で人間が生身のままで究極の悟りを開き、仏になることで、それに対して、修行者が瞑想を続けて絶命し、そのままミイラになることは「即身仏」と言われるそうです。

 

相続税の申告はどうなる

 

即身仏が億万長者だったら、相続税の申告義務はどうなってしまうのだろうか、などと、職業柄ついつい考えてしまいました。

民法では、「相続は、死亡によって開始する」と定めていますので、30数年前に「即身仏」になったところで相続は開始されていることになります。

 

無申告に対する税務署長の税額決定権限行使は法定申告期限から5年以内に限定されており、それとともに、法定納期限から5年で納税者の納税義務も時効により消滅するとされています。

即身仏となった億万長者の相続税は徴収不能なのでしょうか。

 

法定申告期限がポイント

 

 相続税の申告書の提出義務の法定申告期限は、その相続の開始があったことを知った日から10ヶ月です。すでに即身仏になっている父親の死亡に、相続人が気付かなければ、たとえ30数年経っていても、法定申告期限や法定納期限の計算そのものが始まりません。「相続の開始日」ではなく、その開始を「知った日」から申告期限の期限計算が始まるからです。ただし、たとえ30数年後でも、申告義務を法定申告期限内に果たせばペナルティーはありません。

 

それでも法の想定外

 

 とは言え、30数年前の法律に基づき、30数年前の相続財産を確定し、それをその当時の評価方法で評価し、申告納付するということには、法の想定外な不都合が多々生じそうです。

 

引継ぎ資産にかかる所得税の申告については、「知った日」以降に相続人に申告義務が移るのではありません。即身仏には当初から申告義務がなく、申告がなされていたら、それは無効申告であり、かわりに相続人に申告義務があることになり、30数年間の申告義務の無履行ということになります。