A1_法人税

総額主義というテクニック

2012年3月 6日 09:33

何度でも更正処分ができるが

 

 法律の建前では、何度でも更正の請求や更正処分ができることになっています。

 

但し、期間制限の範囲内ということなので、従来は、更正の請求期限が1年と短期だったことから、何度もの更正の請求はありえなかったし、それに対応する更正処分が何度も行われるということは滅多にないことでした。

 

ただし、昨年12月の法改正で、その期間が最低5年に延びたので、建前だけでなく、何度もの更正の請求や更正処分が現実味を帯びるようになってきました。

更正処分の効果と判決の効果

 

税務署長の更正処分は、過去の申告や更正・決定を白紙にもどした上で、あらためて税額を全体として確定しなおす行為である、と言われており、これを"総額主義"の効果といい、そして、新たな更正処分がなされると、過去の申告や更正・決定の効力はそこまでで消滅し、新たな更正処分のみが法律効果を持つ事になり、これを"吸収説"の効果といいます。

 

ところで、税務訴訟での判決も、同じように、総額主義的に税額全体を確定し直し、吸収説的に過去の申告・更正・決定の効果を消滅させる効果をもちます。ただし、判決が確定すると、期間制限内ではあっても、それ以上の更正の請求や更正処分ができなくなり、最終的な確定となります。

 

ちなみに、不服申立てでの異議決定や裁決は税務当局を拘束する効果はあるのですが、判決とは異なり、再更正処分を強制する効果に過ぎず、別な事案であれば、再々更正処分が可能で、最終的な確定とはなりません。

 

アンタッチャブルにする効果

 

 「最終的な確定」すなわち、それ以上の更正処分が有り得なくなる、という法的効果を得るためには、税務訴訟にして確定させればよいわけです。

 

 申告内容に、当局と大きく揉めそうな問題点(例えば移転価格税制など)を含んでいるとした場合、小さな問題で更正の請求をして、減額更正しない処分を出させて、不服申立てをすることになれば、訴訟の勝ち負けに拘わらず、訴訟が終わったところで、最終確定となり、揉めそうな問題点が当局にとっていつの間にかアンタッチャブルとなってしまいます。

 

 期間制限の延長効果と総額主義の法的効果が交錯するところには、税務行政を翻弄させる新しいテクニックが生まれそうです。