A6_源泉所得税

 元従業員(被用者)からの未払い残業代請求の訴えが、突然、裁判所から送られて来ることがあります。


 多くの場合は、労働審判への申立て手続きによるもので、裁判官、労働者側、経営者側の3者が双方から提出された証拠資料等を吟味して、3回の審議で結論を出すことになっています。


一括支払いの和解金又は解決金

 労働審判は、個別的労使紛争が対象です。それ故、集団的未払い残業代の訴えのように、正確な各月の残業代を計算し、各年分の年末調整をやり直す等幾つもの諸手続きを想定していません。双方が合意できる金額での早期決着が眼目ですから、調停成立の文言も、「本件解決金(又は本件和解金)として〇〇〇万円の支払義務がある」といった例は散見されます。まさに、ザックリとした金額です。


名目としての解決金、和解金の実質は

 文言のニュアンスからは、当該解決金等は非課税であるかのような印象も受けますが、やはり審判所への訴えが「未払い残業代」、ということですので、在職中の給与等の追加払い、ということになり、原則、給与所得を構成するのではないかと考えます。


この場合、未確定であった在職中の給与等の追加払いを一時に受けることから、その受けた年の「賞与」としての扱いになるのではないかと考えられます。


支払者(事業主)の手続き

 事業主は、当該解決金が未払い残業代に相当すれば、当然に、その支払いの際には源泉徴収義務を負い、源泉税徴収後の金額を被用者に支払います。

 なお、被用者が源泉徴収すべき税額を含めて強制執行等により未払い残業代全額の回収を求めてきた場合、事業主は解決金の全額を支払う義務を負うことになります。

  

但し、その場合であっても、法的には、事業主の源泉徴収義務は免れることはできません。事業主は、源泉徴収義務者として解決金〇〇〇万円に相当する源泉税を計算し納付しなければなりません。


 そうすると、事業主は、二重に源泉税分を支払ったことになりますので、その分、被用者に請求することができますが、被用者が無資力の場合はその回収は困難です。


 審判所においても、未払い残業代に伴う源泉徴収税額を双方協議しておくのが望ましいように思います。

新日・独租税条約では使用料の源泉が免除

 20151217日に署名された新日・独租税協定は、20161028日に発効し、201711日以後に支払を受けるべきものから適用されています。(新条約は旧条約に比べて減免等の規定が増えています。)


 201711日以降に支払う日・独間の著作権等の使用料は、日本の所得税では20.42%の税率で源泉徴収のところ、最初に支払を受ける日の前日までに「租税条約に関する届出(使用料に対する所得税及び復興特別所得税の軽減・免除)」を提出すれば、免除(=ゼロ%に減免)されます。すなわち、所定の手続きを事前にすることで、支払い側にとっては源泉所得税の申告・納付の手間がなくなり、受け取り側にとっては100%が手取り額となります。


特典条項に関する付表

 租税条約を濫用することを制限するために、受益者が所定の要件を満たす場合にのみ条約の恩典を与えるとするものが特典制限条項であり、新日・独租税協定も特典条項を有する租税条約となっています。そのため、租税条約に関する届出書の他に「特典条項に関する付表(様式17)」及び「居住者証明書(相手国における居住者であることを証明する書類)」が必要になります。


租税条約は強制適用のはず?

「条約は国内法より優先されるから、何も手続きしなくても、自動的に有利な租税条約の規定が適用されるはず」と考える方がいらっしゃるかもしれません。しかしながら、租税条約の文言の中には「租税の額は10%を超えないものとする(=この場合は010%の任意の税率)」などがあり、租税に関する「法」としては機能できません。そこで「租税条約等の実施に伴う所得税法、法人税法及び地方税法の特例等に関する法律」が、租税条約と国内法を結びつける「法」となっています。


租税条約に関する届出」は、同法の省令第2条~第2条の5、第9条の5~第9条の9で定められているので、届出書を出して初めて適用されることになるわけです。


 なお、届出が間に合わなかった場合、事後に提出することで還付請求もできます。

非居住者である外国企業の課税は源泉課税

 一般的に、国内に拠点のない外国企業の自国内源泉所得に課税する方法として、支払い側に源泉所得税の控除・納税義務を課す方法が採用されています。


 たとえば、A社(ソフトウェア開発業)が恒久的施設(=支店など)を持たないB国でC社にソフトウェアを100で販売した場合、B国はC社に20(20)の源泉徴収義務を課します。C社からA社へは80%である金額の80が送金されることになります。


二重課税の調整=まずは外国税額控除です

 A社が日本企業の場合、日本では全世界所得課税なので、国外収入も100%課税対象となります。すでに20%源泉徴収されている上に日本でも法人税が課税されますので、B国での収益に対しては二重課税されることになります。この二重課税の調整方法として、外国税額控除が使われます。


外国税額控除を受けるためには、確定申告書等に控除を受ける金額及びその計算に関する明細を記載した「外国税額控除に関する明細書等」、外国所得税を課されたことを証する書類及び国外所得総額の計算に関する明細書などを添付する必要があります。しかしながら、外国所得税を課されたことを証する書類の入手が困難な場合が少なくありません。特にアジアの国では顕著です。


外国税額控除に必要な書類が揃わない場合の対処法(事前対応方法)

こうした事態が予想される場合には、契約の段階で、受け取りたい金額(=100)を源泉所得税控除後の金額とした価格設定にすれば解決できます。A社がB国で販売した事例でいうと、手取りを100とするために契約金額を125(=100/(120))にします。これで源泉税25125×20%)が控除されても欲しい金額の100を確保できます。なお、外国税金の25は租税公課として損金算入(=経費扱い)として処理されます。


もちろん、顧客との力関係(=いかにA社の商品をC社が欲しがるか)でこうした契約方法が採用できるかどうかも変わってきます。これは外国企業から日本企業が購入する際も使われることがあるので、貴社でも似たような経験があるかもしれません。


(注:日本では税務署から英語の納税証明書の取得は困難ではありません。相手側が自国での外国税額控除を面倒だとしているケースが多いようです。)

国外扶養家族の条件はハードルが高い

 平成 27 年度の税制改正で、平成 28 1 月より非居住者である扶養親族(「国外居住親族」)を有する者は、給与等の源泉徴収及び年末調整において、「国外居住親族」に係る「親族関係書類」や「送金関係書類」を源泉徴収義務者に提出し、又は提示しなければならないこととされています。

 

今回は、12月の年末調整業務の過程で、実際の親族関係書類や送金証明書を確認した上での感想を記します。

 

 一言でいうと、"国外扶養の基準を満たすのは困難"です。一番の難題は、「国外居住親族の生活費又は教育費に充てるための支払いを必要の都度、各人に行ったことを明らかにするもの」(傍点筆者)という点です。単身赴任の場合、未成年の子供も含め、対象者全員に送金した証明書を提示しなければなりません。

 

規定の趣旨vs所得税法の規定

扶養控除の趣旨から考えると、単身赴任の場合、配偶者宛に送金していればそこから当然子供たちの生活費も賄うので、"それでOKでしょ"と思いがちです。しかしながら、所得税法施行規則第47条の2第5項に「生活費又は教育費に充てるための支払を必要の都度、各人に行ったことを明らかにするもの(当該書類が外国語で作成されている場合には、その翻訳文を含む。)とする。」と明記されています。よって、趣旨がこうだからという言い訳は通用しません。

 

会社側が責任を負わされないために

これらの書類の確認は、給与支払者が行わなければなりません。基準を満たさないにもかかわらず扶養控除とし、後日税務調査等で源泉税徴収漏れを指摘されれば、罰金等は会社の負担となってしまいます。

 

 予め会社側で下記の予防策が必要です。

 

①送金明細書のない子供には適用しない。

②書類の日本語訳は本人に準備させる。

③各人への送金明細と親族関係書類が必要だということを、毎年年初(入社時)に書類を渡して告知しておく。

 

※渡すべき書類は、国税庁作成の「非居住者である親族について扶養控除等の適用を受ける方へ(給与所得者用リーフレット)(平成2710)」と同英語版がお薦めです。英語版は、国税庁HPトップ→パンフレット・手引き→源泉所得税関係→源泉徴収全般にあります。

日本版ISAの導入

税制改正では、現行の上場株式等の譲渡損益及び配当に対する10%課税の軽減措置が本年末をもって廃止となり、平成261月以降は、倍の20%課税になります。

この改正のままでは、大衆課税になってしまうということで、「少額投資非課税制度」というものを創設し、投資規模500万円程度の人については、課税対象外としました。日本版ISAと言われるものです。

所得税はともかく、法人税の計算においては、所得税と復興特別所得税の区分は不可欠です。それは、法人税から控除されるのは源泉徴収された所得税のみで、源泉徴収された復興特別所得税は復興特別法人税からしか控除できないからです。      

 復興税が創設されたことから、平成251月から源泉徴収の実務は変わります。

具体的には、所得税の源泉徴収義務者は、所得税を徴する際に、徴収する所得税に加えて復興特別所得税(徴収する所得税額に2.1%の税率を乗じて計算した金額)も源泉徴収しなければなりません。

本年も年末調整を行う時期となりました。昨年と比べて特に改正はありませんが、平成22年度税制改正において「生命保険料控除」が改組され、その改正が本年の年末調整から適用になります。そこで、改組された生命保険料控除を中心に幾つかのポイントを概観してみたいと思います。

来年から課税が始まる復興特別所得税

復興特別所得税の課税が来年から始まります。平成49年までの25年間に亘ります。個人については、来年分の所得税の確定申告や年末調整によって、その人の復興特別所得税が確定し、過不足精算による納付や還付が行われるのですが、実際は、来年11日以後に支払期限のくる来年分以降の各種所得に係る所得税の源泉徴収によって、復興特別所得税の課税事務が始まります。

住民税には復興特別税はありません。

官僚達の仕事

 霞が関の省庁は不夜城の如く夜遅くまで火が灯っています。官僚達の仕事の相当部分が「質問趣意書」に対する「答弁書」の作成に費やされています。

国会報道として、テレビで放映され、新聞その他のマスコミで報道されているような、国会での議員と政府との質疑のやりとりは、議員の質疑活動のほんの一部です。そこに登場しない他の国会議員の姿はなかなか国民の目に届きませんが、衆議院・参議院のホームページを覗いてみると、紙の上での国会討論が盛んに行われていることが確認できます。それが、「質問趣意書」で、政府への提出とそれへの答弁というものです。国会での質疑が尽くしきれなかったものの再質問もあります。毎年、衆参合わせて千通以上の「質問趣意書」と「答弁書」がやり取りされています。

株式の配当・譲渡課税の原則

 

株式の配当所得に対する課税は,非上場株式については国税20%の源泉徴収の上確定申告での総合課税、上場株式については10%(国税7%、地方税3%)の源泉徴収の上、総合課税、申告分離課税、申告不要の選択となるのが原則です。

 

株式の譲渡所得も似た制度になっていますが、総合課税は無く、非上場は20%(国税15%、地方税5%)の申告分離のみで源泉徴収はありません。

 

上場株式は配当所得との損益通算が可能で、申告分離課税のほか、10%(国税7%、地方税3%)の源泉徴収の上、申告不要とする選択もでき、譲渡損失が残るときは、損失の繰越しをすることができます。

高い分配金という魅力

 

高い分配金を掲げた投信が人気を集めており、その高さの魅力に引かれて、毎月分配型の株式投資信託に投資しているという人がいると思います。

 

受け取る分配金には、特別分配金と普通分配金があり、源泉分離課税の場合でも、申告分離課税の場合でも、特別分配金には課税がされません。

 

非課税分配金なんて美味しそうな話ですが・・・・

それがどう違うのか、ここでおさらいしたいと思います。

現物配当と現物分配

 

現物分配とは、剰余金の配当等またはみなし配当により株主等に金銭以外の資産が交付されることをいいます。

 

会社法で定める現物配当とはこの規定の上では同じですが、税法上では組織再編の実行行為と位置づけされ、配当行為としても排除したので、会社法とは異なる命名とされました。

3党合意をうけて今年から創設適用

 

 630日公布された3党合意23年度税制改正法の目玉は、年金者の申告不要制度でしょう。

 

毎年の早春の喧騒を彩る所得税の確定申告の風物詩は、10数年前から「自書申告」のスローガンのもと、年金所得者の申告手続の急増に備えていました。今年からは、それを更に進化させて、「申告不要」ということにしてしまいました。

給与所得者の扶養控除等(異動)申告書は、①主たる給与から受けるもの、②他の所得者が受けるもの、③従たる給与から受けるものの欄から構成されています。

 

この申告書の提出は、年末調整事務においては必須の手続きで、一般的に、本年であれば、「平成22年分給与所得者の保険料控除申告書兼配偶者特別控除申告書」と「平成23年分給与所得者の扶養控除等(異動)申告書」を主たる給与支払者に提出します。この場合、保険料控除申告書は平成22年分であるのに対して扶養控除等(異動)申告書は平成23年分となっています。

還付金等に係る国税に対する請求権は、その請求をすることができる日から5年間行使しないことによって、時効により消滅します。

日本における所得税と源泉徴収制度の起源

 

日本における所得税の導入はイギリスに範をとって行われ、明治20年(1887年)に導入され、課税の対象者はわずかな富裕層に限られておりました。

 

その後、幾度かの税制改正を経て昭和15年(1940年)の税制改正により勤労所得に対する源泉徴収制度を導入したときにはナチスドイツに範をとりました。

源泉徴収はともかくとして、年末調整は世界で日本だけにしかない制度だ、という神話があります。その神話について、ちょっと調べてみました。

範囲内は非課税対象

 

毎日の通勤に電車やバスなどの公共機関はもちろん、マイカーや自転車を利用する方は多いでしょう。

 

 役員や使用人の通勤にかかる費用は、通勤手当や通勤用定期乗車券として通常の給与所得に加算して支給されます。これらは、「合理的な運賃等の額」の範囲内である限り課税されないことになっており、1カ月あたりの非課税となる限度額を超えなければ源泉徴収の対象となりません。この限度額はどのように定められているのでしょうか。

居住者か非居住者の何れかに該当するかによって、税務上の取り扱いが異なります。

税務P/Lと税務B/Sへの記載

 

 会社決算書の貸借対照表をB/Sと、損益計算書をP/Lと言ったりしますが、これを税務的に修正表現したものが、法人税申告書の別表四(税務P/L)であり、別表五(税務B/S)です。